取材で向田邦子さんのエッセイ「手袋をさがす」の話が出たので、図書館へ行って読んできた。
向田さんは、若い頃、どうしても気に入った手袋が見つからなくて、手袋なしで過ごしていたことがあるのだという(今よりずっと東京は寒かったのに)。
すると、当時の上司に、「手袋のことだけじゃない、そうやって選り好みしていると人生すべてが惨めになるよ」といった忠告を受けたのだそうだ。
それで向田さんは一晩、どうして自分はいちいち何事にもこだわってしまうのだろうと考えてはみたものの、結局、反省するのをやめたのだそうだ。
自分はいつも欲求不満で、もっともっとと欲しがっている。でも、人にどう言われても、自分の好きなようにしようと、その日、決めたのだという。
それから向田さんは転職して、作家になった。けれど、やっぱりいわゆる女の幸せは手にできなかったと言う。でも、あの時、誰かと結婚していたら、やっぱりそれはそれで不満を抱えていただろう。エッセイでは、そう回顧していた。
人には、どうにもならない性っていうものがあるのだろう。
私も、どちらかといえば向田派だ。
向田さんの時代より、自分の欲張りを持ちつつ結婚するだって可能だったのかもしれないけれど、そういうラッキーなことはやっぱり起こらなかった。
どこかで、あそこで結婚しておけばよかったのかな、という時点はあるのだけれど、やっぱりダメだったろうな、と思う。
いや、ちょっと待て。そう言えば、私は結婚してみたことさえあるじゃないか。
向田さんは、作家になっても、いまだに自分は手袋をさがしているのだと書いていた。
私も、50過ぎてもまださがしているような気がする。多分、自分にとっての幸せってやつを。
大豆田とわ子も言ってたな。「私は幸せを諦めませんから!」
まあ、そういうことなんだろう、と思う。
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