小川洋子さんの『ことり』を読んだ。
本物の読書体験ってこういうものだ、と改めて感じる。
「人生に、文学を」というプロジェクトがあって、
小川洋子さんの「物語の生まれる場所」という講演がYouTubeに上がっていた。
いろいろな偶然が重なって、つながって、いつしか小説の形になっていく、
その様が、作家自身の口から語られていて、とても興味深かった。
でも、私が一番心が震えた言葉は、
「小説は小さな人、小さなことを書くもの」というものだった。
取るに足らないようなものや人について、丹念に描いていくことが小説というものの本質。
それが「文学の懐」なんだと思わされた。
柔らかい物腰なのに、きっぱりした小川さんの態度にも感じ入るものがあった。
『ことり』の主人公、ことりの叔父さんのことを
私はきっと一生忘れないだろうと思う。
そしてその切なさを、自分の拠り所にしていくだろう。

この花の名は?@表参道
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